イケダハヤトの実年収560万円論から感じる、サラリーマン社会の深い闇
この記事に関して
こんな反論が行われ
2015年も終わろうとしている。世は事もなし。
だがイケダハヤト実年収560万円論には、批判者id:goodbyebluemonday23氏のフレームワークと、彼の論点とにズレがあり、それが気になったので書いてみることにした。
年商ではなく年収で語れという無意味さ
id:goodbyebluemonday23氏は、上記エントリの最初にこう書いている。
ああ、またイケハヤさんの定期報告か、と思いながら記事を読んだのだが、この人の収入に関する記事を読むたびに気になっていることがあった。
どうしてこの人は、いつも年商で数字を語ろうとするのだろう。
年商で数字を語るのは当然だろう。イケダハヤト氏は個人事業主なのだから。
売上100億円でも、利益がゼロ、あるいは赤字なんて企業はザラにある。売上高の数字を高らかに主張されても、「あの、重要なのは利益なんですが…」という困惑の表情を浮かべるしかない。
上場している企業ならともかく、法人化すらしていないのになぜ利益を出さなければならないのか不思議だ。利益とは給料のことではない。
事業主は自分の給料を自分で決められる立場にある。よってイケダ氏が「自分の取り分は100万円でいいや」と思ったなら、彼の給料は100万円だ。
イケダ氏の年収が例え560万円だったとしても、それは彼の判断によるものだ。id:goodbyebluemonday23氏が作成した収支計算書にもあるように、年商自体は確実に1600万円以上あるのだから、それをどう使うかは事業主の勝手だ。
イケダ氏の支出において固定費といえるのは人件費170万円と減価償却費42万円だけだから、彼が自分の手取りを増やそうと思えば、年収1000万円以上は確実なはずだ。
メディアは投資対象である
再び引用する。
2015年から始めた有料サロン。月額4,980円と安くない月謝にも関わらず、会員数は現在370人いるらしい。年間700万弱の収入。これは凄い。
(中略)
さて、このサロン収入については、彼はブログでこのように書いている。
前月に続き、有料サロンの売上の方は、全額ビッグイシュー・オンラインの運営に投入しています(なので、上の売上はすべてぼくの懐に入っているわけではありません)。
あらら、サロン運営に関しては収入と支出が同額で、結局のところ利益は出ていないようだ。
id:goodbyebluemonday23氏は、イケダ氏がサロン運営に700万円弱(id:goodbyebluemonday23の推測では662万円)の金額を突っ込んでいると思い込んでいるようだが、ビッグイシュー・オンラインはサロンではなくWebメディアだ。
ビッグイシューはホームレスが手売りする雑誌で、代金350円の内180円が彼らの収入になる雑誌として有名だが、id:goodbyebluemonday23氏はイケダ氏のオンラインサロンの名前だと勘違いしたようだ。
Webメディアは売却できるので、運営費をまるごと費用とみなすのはおかしい。SimilarWebにかけたところ、ビッグイシュー・オンラインのPVはそれほど伸びていないようだが、投資しなければPVを伸ばせないのも事実なので、サロン収入をどのくらいつぎ込むかは、イケダ氏の経営判断によるとしかいえない。
また、ホームレス支援のためのWebメディアを自腹を切って運営しているイケダ氏には、それが例え金儲けのためであったとしても、一定のリスペクトを持って接するべきだろう。ホームレスを助けていることに変わりはないのだから。
もっとサラリーマンをリスペクトしよう
これはイケダ氏に向けての言葉ではない。id:goodbyebluemonday23氏へのものだ。
彼はサラリーマンであることに誇りを持っているように見えるが、実際は異なる。以下のエントリから、彼の職業観が読み取れる。
気になった箇所を引用する。
たまに、会話の中で「仕事は楽しいか?」と聞かれることがある。私はいつもその質問が来ると閉口してしまう。
仕事を、楽しいか楽しくないかなんてレベルで考えたことがないからだ。
楽しかろうが、楽しくなかろうが、仕事は仕事だ。どんなにつまらない仕事でもつらい仕事でも、誠実に向き合って行くしかない。
もっと言ってしまうならば、基本的に仕事は楽しくないものだと思う。しかし、仕事ができる人というのは仕事を「楽しそうに」やっている。
日本人の典型的な労働観だと思う。そしてこのような労働観を是正していかないと、日本の生産性は落ち込む一方だとも思う。苦行をしたからといって生産性が向上するわけではなく、むしろ苦行を強いるような労働環境を改善した方が、生産性が伸びるからだ。
労働生産性は、アウトプット/インプットで求められる。インプットは労働者数もしくは労働者数*労働時間だから、苦行はインプットを増やすばかりで生産性を改善しない。週40時間以上の労働は、生産性に悪影響を与える。
仕事ができる人は、実際に仕事を楽しんでいる。だから生産性が高い。苦行の先にあるのは、うつ病か過労死だけである。id:goodbyebluemonday23氏はもっと自分の人生を大事にした方がいい。いくら苦行しても、結局は他人は結果しか見ないのだから。努力を評価してもらえるのは、結果を出した者だけなのだ。そしてサラリーマンに求められる結果とは、生産性の向上に他ならない。
仕事と誠実に向き合うというよりも、仕事に取り憑かれているかのようなid:goodbyebluemonday23氏ではあるが、サラリーマンたる地位に誇りを持っているかといえば、そうでもないようだ。
いいか、サラリーマンをろくにできなかったぼんくらが、サラリーマンのせいにするんじゃねえ。お前が進む道を決めるのはサラリーマンすらできないお前なんだよ。
正直、言い方がきつすぎてどうかと思うが、私も言いたいことの根本は同じだ。
上記引用は、id:goodbyebluemonday23氏が、以下のエントリに関しての感想として述べたものである。
引っかかるのは、「サラリーマンをろくにできなかったぼんくら」「サラリーマンすら」という表現だ。
id:goodbyebluemonday23氏の中では、サラリーマンというのは社会人として最低限こなせて当たり前のポジションというだけで、別にサラリーマンをこなせたからといってリスペクトされるようなものではないようだ。
将来を捨てて「会社辞めてブロガーになれ」と無責任に言うのは、常識のある社会人であれば耳を疑う台詞だ。彼の人生を台無しにする可能性があるということを考えているのだろうか。(中略)別に会社員であることを賞賛しているわけではない。しかし、自分で選んだ仕事に対して誠実に向き合うこともせずに、ただ目の前の現実から逃げることは、今後長く続く人生において、きっとプラスにならない。
イケダ氏は確かに「会社辞めろ」とことあるごとに言っているが、それはサラリーマンを否定しているわけではないだろう。また、イケダ氏に対し「会社を辞めろと若者にいうのは無責任だ」と憤慨しているようだが、若者といえども大人なのだから、自分で判断するだろう。
それに会社を辞めることが、目の前の現実から逃げることになるとは限らない。問題の突破口が目の前にしかないと考えるのは、視野狭窄だと思う。
事業主をサラリーマン視点で批判することの違和感
id:goodbyebluemonday23氏のイケダハヤト氏に対する批判は、収支計算にしろ、労働観にしろ、サラリーマンとしてのフレームワークで個人事業主であるイケダ氏を批判しているため、批判できているように見えて、批判するポイントが微妙にズレている。
イケダ氏の実年収云々は、イケダ氏の経営判断次第でいくらでも上下するものだ。労働観だって事業主としての立場で考えれば、うまくいかないならさっさと辞めて損切りするのが適切である。実際イケダ氏はかつてメルマガを配信していたが、儲からないからとすぐに手を引いたはずだ。
id:goodbyebluemonday23氏は、サラリーマンではないイケダハヤト氏を批判するのに、サラリーマンのフレームワークを用いている。もしかしたら日本企業の経営者も、同じような間違いを犯しているのかもしれない。